蜜柑山の急斜面

日記です。

熊の棲む森と、燃える水。「冬眠する熊に添い寝してごらん」についての覚え書き

シアターコクーンで「冬眠する熊に添い寝してごらん」を観劇。作・古川日出男、演出・蜷川幸雄

舞台は北陸。射撃の五輪代表選手の兄と、エリート商社マンの弟。弟には恋人がいて、彼女は詩人。彼女の髪には獣毛のようなメッシュが入っている。弟の恋人を兄が寝取るところから人生は破滅へ向かう。現代の三角関係に、5代にわたる猟師のDNAが交差する。時代は20世紀初頭から現在までの100年にまたがるし、舞台も北陸と書いたけど正確には日本海をはさんで移動したりするので、次々に人間が生まれては死んでもう誰が誰やら今がいつやらわかんなくなるような、『百年の孤独』のような「めくるめく感」があるなあと思ったら、古川さんはガルシア・マルケスが好きだとパンフレットに書いてあった。

「一〇〇年の想像力を持たない人間は、二〇年と生きられない」など、印象的な文章がたくさんあって大好きなんだけど、その分、この本なら古川日出男の朗読劇のほうがよかったのではないかと一瞬思ったけれど、やっぱりそうではなくて上演してなんぼのホンなんだと思い直したのは、犬と熊の存在です。特に犬の動きがすごかったです。犬が出てるシーンは犬ばっかり見てた。カーテンコールの私の拍手は、犬の中の人と熊の中の人に捧げられております。だからこそ唯一の心残りというか、物足りない感があるとすれば、「熊の時間」「犬の時間」が、上演ではあんまりピンとこなかったことかな。台詞やト書きで「熊の時間」「犬の時間」と出てくるたびになんとかそれを体感しようと試みたつもりなんだけど……。でも、それが体感できたらもう人間界の演劇ではなくなるような気もする。

戯曲が掲載されている新潮を買ってあるので、舞台を反芻するように読み返すつもり。熊の時間、体感できるかなあ。ああ、楽しみだ。

あと、いつも長野で飲んだくれるお銀ちゃんやきーたんに言っておく。熊の胆(くまのい)を、悪酔い防止だとかいってあんなにばかすかと粗末に飲んでたらそのうちバチが当たるからな!

 

そういえば、ひばりを誘拐したのが犬ってことは、あの犬たちは多根彦の手下なんかな? なんで多根彦の味方をしたのやろ?

 

あ、あと、いちばん好きなシーンは冒頭。書くとネタバレ(初っ端だけど)になるので書きませんが、ここだけで「5億点」((c)宇多丸)をたたき出してると思いました。